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「あたし……。
別にアンタに未練はないのよ。
……でも、ちょっぴり後悔はしたの」
マジ、水難……ていうか男難の相ね。
まさかまさかの元カレとの再会。
やっと吹っ切れたと思っていたのにな。
「……俺はすげぇ、後悔した」
何を言い出すんだコイツは……!
「は?
あたしといると不幸になるって言ったの琢磨でしょ?
幸薄女のレッテルはられたのよ」
そうなんだ。
あたしはとことんついてない女だった。
だから琢磨はあたしから離れて行った。
『俺までついてなくなってる気がする』なんて抜かしてくれやがって。
「俺……。
梨乃がいなくなって何だか寂しかった。
梨乃は確かについてない事多いけど、それが全部梨乃なんだって……。
雨がふるたび梨乃を思い出して胸が苦しかった」
何よぉ、またこんな優しい言葉掛けてくれるなんて。
付き合ってる頃もそうだった。
酷い事言うくせに、優しくするんだ。
『飴と鞭』だ。
「……聞こえないわ。
こんな土砂降りにアンタの声、聞こえないわ」
あたしは琢磨に意地悪する。
この雨と一緒にあたしの気持ちも流れていってほしい。
「雨降りは俺密かに期待してた。
梨乃に会えるかも……って」
そうだったのか。
あたしはてっきりたまたまかと思ってたけど、意図的だったのね。
何ていうしたたかさだろう。
まぁ、今更じゃないけどね。
「さっきから思ってたんだけど、あたしと寄りを戻したいの?」
遠回しにそう言ってる気がするのよね。
「そう言ってるつもりだが?」
うっ、何食わぬ顔ではっきり言いやがったし。
「水も滴るいい女だからね~。
ちゃんとわかってるじゃないの。
だけどアンタ、あたしの不幸も背負えるの?
一度、逃げちゃったしね」
あたしの不幸はただ者じゃない。
今日みたいにいきなり土砂降りに見舞われるのは序の口。
デートの度に雨。
美肌狙いで始めた美容法は皆が成功してもあたしだけが失敗。
犬のウンチとガムを同時に踏んだり……。
後は……。
うん。
もう考えたくないわ。
笑いたければ笑えばいいのよ。
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