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輪廻転生というものは、ある意味恐怖心を呼び起こさせるものだと思う。
だってそうだろう?
見知らぬ人の意識が自分と共生し、その人の死という苦しみ訴えかけてくるのだ。
常にそれへの恐れ、人を信じることすらままならない。
だから僕――篠崎歩(しのざきあゆむ)は誰とも関われなかった。
僕自身がそれを望んでいたのだと思う。
友達なんかもともと居なかったし、人と関係を持てないことに対して苦痛を感じることは無かった。
ある意味、とても強固な殼を被っていたのでは無いだろうか。
――怖くない。
――痛くない。
――苦しくない。
全ての感情を殺し、記憶と共に朽ちていく。
それが僕のことを待ち構えていた結末の筈だった。
けれどどんなに固い殼でも壊せない訳ではない。
僕の場合、たった一言。本当にひとこと
「頑張ってるね」
それだけのことで、はじめて外の世界に出ることが出来た。
彼はきっと特別な意を含めたつもりは無かったのだろう。
けれど僕にとってその言葉は何よりも温かく、それを教えてくれた彼には知らず知らずの内に好意を抱いてしまっていた。
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