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こうした気持ちになった時、自分は人間では無くなったんだと、改めて自覚する。
何度も自問自答した、あの時に自分は死ぬべきだったのか?
だが、過去は変えられない。
ならば、目の前の赤子には、自分は触れるべきではなく、放っておく方が良いのかもしれない。
例え死ぬと判って居ても。人間は、人間として生きる方が幸せなのだ。自分は、そう在りたかった。
考えに没頭していた。
いつも一人で居たから、無意識に頭の中に閉じ籠って、目の前の現実から体が無防備になっていた。
だから、自分に触れて来た温かみに驚いてたじろいた。
無意識に伸ばしていた指先に、赤子がその小さな手で触れて、まるで抱いて欲しいとせがむ様に両手を開いていた。
そうしてどうしてか、伽藍には拒む事が出来なかった。その願いは伽藍の望みにも思えたから。
温かいこの小さな命を、伽藍は抱き締めた。
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