48人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
いつもの様に少年は闇夜を歩く。
暑くなり始めた季節には不釣り合いな長袖の衣を纏って、涼しげに歩みを進める。
それは街中であったり、次の瞬間には山の中だったり、けれど、どこであれ同じなのは“空中”を走ると言う事。
空を駆けながら、いつもの様に考える。
奴の所から逃げてどれくらい経ったのか?
それがずっと少年の心を占めて居た。
心はがんじがらめで動けずに居る。
それでも外気に触れ、自由を満喫する。
目下少年の全てはそれだけだった。
囚われて。
奪われて、
それでも尚、生きていたい欲求は無くならなくて。
だから、死しても生きる事を手放せなかった。
少年の名は、伽藍(ガラン)
人で在ったのはもう随分昔の、人の間で語られるだけの“存在”に成った少年。
“吸血鬼”の伽藍。
...
否、吸血鬼の糧と成った少年。
それが、伽藍だった。
最初のコメントを投稿しよう!