生きたくて死にたい僕

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  思考を遮る温かな翼が顔を掠める。 小鳥が三羽、伽藍の肩に留まった。 「あぁ、お前達……」 左に真っ白な小鳥。 右に茶色と黒の小鳥。 ... あの時の小鳥の生き残り。     . 吸血鬼が糧を得るのは、吸血鬼として成熟した時。 吸血行為は糧にする人間を仲間に引き入れる時から始まる。 そうして仲間を増やして行くのだ。 “正常な吸血鬼”ならば、そうするのだが、“闇に堕ちた吸血鬼”はまったく違った。 何人もの糧を造り、閉じ込め狂わせ、吸血鬼として成熟せぬままにその血液を吸い尽くす。 伽藍の主がその闇に堕ちた吸血鬼だった。 そう言った者達が世に知れ渡った吸血鬼の正体である。 兎も角、伽藍は閉じ込められ、死を待つだけの身で在った。 死にたくなくて差し出した手を取ったのは死神で、回避した筈の死は、伽藍のすぐ傍に在った。  
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