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微睡みの中で、小さな鼓動が聞こえて来た。
夢なのかとも思ったが、小さいがしっかりと脈打つ血液の流れが耳に届いた。
いつも飢えている伽藍に、それは強く訴えかけてくる。命の流れの音。
力無い体を起こし、木陰から出る。
それは無意識の行動。
鼓動だけが聴こえる。
その音は抗えない誘惑。
伽藍の居た大木の根元に、その音の主は居た。
小さな赤子。
深い森の奥に人間が居る事自体珍しい上に、年端もいかない赤子がそこに居る事実は、一つの事柄を示している。
捨てられたのだ。
恐らくは伽藍と同じ理由で。
溜め息が出る。
この時、自分が選んだのは、闇への道。
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