生きたくて死にたい僕

7/11

48人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
  微睡みの中で、小さな鼓動が聞こえて来た。 夢なのかとも思ったが、小さいがしっかりと脈打つ血液の流れが耳に届いた。 いつも飢えている伽藍に、それは強く訴えかけてくる。命の流れの音。 力無い体を起こし、木陰から出る。 それは無意識の行動。 鼓動だけが聴こえる。 その音は抗えない誘惑。 伽藍の居た大木の根元に、その音の主は居た。 小さな赤子。 深い森の奥に人間が居る事自体珍しい上に、年端もいかない赤子がそこに居る事実は、一つの事柄を示している。 捨てられたのだ。 恐らくは伽藍と同じ理由で。 溜め息が出る。 この時、自分が選んだのは、闇への道。  
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加