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「場所は深ヶ仁村(みかじんむら)だよ。
望月君が引っ越しをしてないなら、ちょっと遠いけど新幹線と電車を乗り継いで、最寄り駅まで来てくれたらお父さんが迎えに行くって言ってくれたし…。」
深ヶ仁村なんて変わった名前の村があったか、気になってパソコンで調べてみたらすぐに結果が出てきた。
「あ~、多分実家よりは近いかな。
いまは、大学近くの部屋を借りて住んでるからさ。
今週末にそっちに向かうよ、お昼くらいにはつける距離だとは思う。」
彼女から聞いた村を、パソコンで検索すれば、すぐに向かう為の路線等を調べられた。
「わかった、お父さんにも話しておくね。
忙しいのにごめんね…。」
電話の向こうで、申し訳なさそうにうなだれてる彼女の姿が、僕には見えたような気がした。
「いや、僕としてはレポートにも行き詰まってたし。
有り難い誘いだったよ、だから井々野さんが気にすることなんてないから。」
少しでも彼女の気持ちが晴れるようにと、思って迷惑なんかじゃないと一言付け加えた。
「うん…ありがとう望月君。
それじゃ、今週末待ってるね。」
「あぁ、じゃあまた…。」
そういって電話を切ろうとした、その時何か言いようのない気配を感じた。
電話は、切れているのか分からないが向こうから、ノイズのような音に混じって微かに何か聞こえた。
ジーッ……“ジャ”…ザザッ“マ”…ガーッ
それからプツンッと、音がしてすぐニャーと猫の鳴き声が聞こえ、部屋には静寂が訪れた。
いま僕が聞いたのは何だったんだ…。
ノイズの合間に聞こえた人の声とは思えない声…。
そして、唐突に聞こえた猫の鳴き声…。
背筋を汗が伝う…、部屋は蒸し暑いくらいなのに肌寒さに体が震えた。
そして、僕はあの奇妙な事件へと足を踏み出した…。
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