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初江の馬鹿が…。
こんな最後のお願いなんて書かれたら行くしかないじゃ…ないか。
…生きていてくれたのか。
正弘の馬鹿が…。
今日は日射しが強いから目がやられてしまったようだ。
視界がぼやけていけねぇや。
そうだ、仏壇に手を合わせてこよう。
そして、手紙を有難うと言おう。
国道を渡ろうとしたら、あの図体の大きな子供の姿があった。
また、正也にランドセルを持たせていた。
『おっ、正也のじいさまじゃないか?正也は口がないから喋れないんだべ?じいさまもじゃろ?ほら、俺の言った通りだろうが…』
図体のでかい子供は仲間に向かって誇らしげに拳を上げた。
その拳を俺は力任せに捻り上げた。
老体とはいえ、海に生きた男だ。
腕力はまだある。
子供は怯えた顔を向けて、放してと懇願した。
『もう俺の孫を苛めるな。俺の大事な…大事な孫なんだ。おめぇ達にも、じいさまおるな?おんなしだ。皆、どのじいさまもおんなし気持ちだ。な?わかるな。』
手を放すと蜘蛛の子を散らす様に皆いなくなった。
正也だけが残っていて、じっと目を見開いていた。
『一緒に来い。迎えに行くぞ。』
俺は孫のまだ小さな柔らかな手を握った。
久しぶりに握った。
初江の仏壇へは、後から報告も兼ねてとなりそうだ。
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