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「萩花~、待ってよ~っ!」
「ほらほら! 早くしないとびしょ濡れになっちゃうでしょ!」
まだ明るい空から、しとしとと降り続ける雨。
夕日に照らされた雲はあまり多くはない――寧ろ少ない位だ。
いわゆる、狐の嫁入り。
そんな雨降る黄昏の街を、萩花とその友は傘も差さずに走っていた。
学校からの帰路に遭遇した突然の土砂降り。
天気予報も空模様もお構いなしにやって来たそれへ、彼女達は何の術も持ち合わせてはいなかった。
先ほどまではのんびりと談笑を楽しみながら、街並みの彼方に輝く西日へと向かい歩いていた。
――今となっては空の端で笑う太陽を追いかけているようだ、そんな感覚に萩花は苛まれる。
「あっ、萩花~! あそこの軒先入ろうよ~」
「え!? あ! うんっ、わかった!」
物思いに走っていたので、萩花は友の指差す軒先を見逃してしまったようだ。
促されてやっと気付いたそこへ向け、彼女は踵を返した。
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