雨止待～紅蛮殻～

狐の嫁入り

――うわ、どうしよう。ぶっちゃけ冷やかしだよね、わたし。

ぐるぐると思考ばかりを巡らせてしまい、踞った状態から抜け出せない萩花。
「おやぁ？」と気の抜けた感じに声の主が首を傾げたのを、何となく彼女は認識した。

「えー……っとぉー……」
「萩花～……へいき？」

ハッと振り返れば、店先から不安そうに覗く友の姿が。
若干緊張が和らいだ萩花は、立ち上がりながら言葉を紡いでいく。

「すいません……雨宿りさせて貰ってたら、これが……」

摘まんだシャーペンを掲げるようにすると、
声の主は「あぁ！」と左手に右手の拳を乗せるという、最早大げさな域となった手振りで理解を示した。
――その様子にさっきの雰囲気は気の迷いだったのか？　と拍子抜けしながら、
萩花はやっとその人物と顔を合わせることとなる。