君の分まで

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「はい、これ!」 私はぶっきらぼうにハートのシールで封をされた手紙を彼に差し出す。 カメラのレンズを見ていた眠そうに開かれた目がこちらを見る。 「僕に?」 小首を傾げる動作にフワフワの癖毛がふわりと揺れる。 「そう!あんたに!」 そう言ってもう一度強く差し出せば「ありがと」と遠慮がちに手紙を受け取る。 私はいつもの定位置、写真部部室の長机の彼の反対側に座る。 手紙の前後ろを黒目大きな瞳が追うと視線が私の方を向き、ドキリとさせられる。 「空ちゃんから?」 「んなわけないでしょう!!全然知らない女子から『同じ写真部だから』って押し付けられたの!ちゃんと返事しなさいよね!そのラブレター!」
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