君の分まで

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「そっかぁ分かったぁ」と困ったように目尻と眉毛を下げて笑う彼の姿を見ているとなんであんな言い方をしてしまったんだろうと後悔した。 黒目がちな瞳。フワフワの天然パーマの細い髪。ふっくらした唇。整った顔立ち。 我らが写真部のエース。佐藤真。そんじょそこらの女子より可愛い顔な上に写真業界ではもう名前が知られている程の実力がある。 そんな男子を女子達が黙っているわけなく、私がラブレターを押し付けられたのは初めてじゃない。 ふぅと私がため息をつけば、向かいに座る彼は手紙をバックに仕舞いながらこちらを向いてニヘラと緩んだ笑みを向ける。 私はふいっと視線をそらした。これじゃあ私が怒ってるみたいだ。 別に怒る理由なんて無い。 私と彼は付き合ってるわけじゃないんだから。
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