君の分まで

「……別に行ってあげてもいいけど……」

と、素直じゃない自分に心の中で頭を抱えていると、彼は「良かった！」と笑い、また、私の心臓を振り回した。

今まで、一緒に撮影に行く事はあっても二人きりじゃなかった。男の人と二人で出かけるなんて、私の生涯初デートとして記録してもいいんだろうか。

なんてあれやこれやと考えていると「空ちゃんは？さっき何を言いかけていたの？」と質問が飛んでくる。

「な、なんでもないわよ！」

とはぐらかした。聞いた事でギクシャクしたら撮影の時に気まずくなるのは嫌だったから。