七年前のプロローグ

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いつもの私なら、決めたらすぐに実行する。でも、今日だけは何故か出来なかった。 飛鳥のあの複雑な表情を思い出すと、責めるのは間違ってるんじゃないか、と段々思い始めたからだ。もしかすると知らない間に飛鳥を傷つけていたのかもしれない。 グルグルと聞きたい感情とよくわからない感情が頭の中をせめぎ合い、身動きがとれない私は、友ちゃんに相談してみた。どうしたらいいかを。 「ねぇ、友ちゃん。ちょっと聞きたいんだけど、いい?」 「ん、いいよ」 「あのね…」 掻い摘んで説明した。道場にずっと通ってくれた子が友達宣言してから素っ気なくなった事を。話してて急に恥ずかしくなったから、飛鳥の名前は伏せたけど。 友ちゃんは前半は真剣に、後半はニヤニヤしながら聞いてくれた。 「へぇーっ!びっくりしたなぁ!お子ちゃまな晶を落とす男子がウチの学校にいたんだ!」 落とす?飛鳥に気絶させられた記憶は無いけど…。 「ズバリ言います!晶はその男の子が好きなんだよ!」 「うん、そうだよ。だから私も好きって言ったの」 「うーん、上手く言えないけど、なぁんか違うんだよねぇ…」 腕を組み、友ちゃんはウンウンうなり始めた。 「ライフじゃ無くて、ライブ?…違うなぁ。そんな響きだったと思うんだけどなぁ」 友ちゃんはひとしきり唸って、 「ところでさあ、その男子って誰?」 と聞いてきた。
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