七年前のプロローグ

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友ちゃんの性格から考えて、隠せば余計に茶化される。素直に話そう。 「飛鳥だよ。ホラ、前話したでしょ」 飛鳥が入門した翌日、凄くはしゃいで友ちゃんに、「その子も災難だねぇ~」と言われた事を思い出した。楽しい思い出だが、今は何故かつらい。 「誰?覚えてないなぁ」 首を捻る友ちゃん。ちょっとだけムッとした。 「覚えてないの?ホラ、割とカッコよくて、優しくて、お喋りすると楽しい子だよ?」 勢いだったとはいえ、後から考えると恥ずかしい発言だった。 この説明は私の主観だ、友ちゃんがそれで解る筈もない。 「うーーーん…。名字、解る?」 「天川」 即答した。できた。それは私が飛鳥の事を一番よく知っている、という証明。 「天川?…ああ、騎士君の友達ね!やっと解った!」 「騎士君?」 知らない名前だ。飛鳥の口からは聞いたことがない。 「晶、アンタ騎士君を知らないの?ホントお子ちゃまね…。それにしても、あの天川がねぇ、へえ」 友ちゃんがまたにやにやしだした。今さっきの発言を思い出し、顔が熱くなる。 友ちゃんに茶化されたくなかった私は、話を一度逸らした。 「騎士君ってどんな人なの?」 話をこっちに逸らしたのは、間違いだった。 「ほう、お子ちゃまだった晶ちゃんもやっと人並みに騎士君に興味を持ったのかね。よいよい、それが自然じゃよ。まず、騎士君とは…」 芝居がかった口調で友ちゃんは話し始めた。昼休み中、ずっと。 友ちゃんは、ミーハーだった。
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