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いいや、これは逃げだ。拗らせると良くない、と思う。
弱気な自分を叱り、再度決意する。
「ねえ、騎士君ってどの人?」
一番近くの女の子に話し掛ける。あの人、と指を指して教えてくれた。
指の先を辿って、私は絶句した。騎士君は、友ちゃんから聞いた話より、格好良かった。
私が固まってる間に、その女の子は気を利かせて騎士君を呼んでくれた。
騎士君が目の前に来た。私は、緊張して話せない。
「やあ、えーと…、確か中宮さんだよね。三組の」
爽やかに話しかけてくれた。飛鳥が私の話をしてくれてたのかな?
そう考えたら、嬉しくて少しだけ緊張がほぐれた。
「そうだよ、竜崎君。それでね、聞きたいことがあるの」
「いいよ、何でも聞いて」
騎士君は格好良いだけでなく優しいみたい。これなら面食いの友ちゃんが大絶賛するのも頷ける。
「飛鳥の事だけど…」
飛鳥という単語がでた瞬間、騎士君の顔が一瞬険しくなった。
もしかして、聞いちゃいけないことだったのかな…。
「アイツ、それで今日は部屋から出て来なかったのか…」
全て納得したって表情で、騎士君は呟いた。
あれ?友ちゃんから聞いてた話とちょっと違うな。騎士君はいつでも爽やかって言ってたけど…。
「ここじゃちょっと話しづらいから、場所を変えようか」
言われて、気付いた。ここは教室の扉の前。通行の邪魔だし、何より聞かれたら凄く恥ずかしい。
私は赤くなりながら頷き、騎士君と屋上に移動する事にした。
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