七年前のプロローグ

8/10
前へ
/38ページ
次へ
いいや、これは逃げだ。拗らせると良くない、と思う。 弱気な自分を叱り、再度決意する。 「ねえ、騎士君ってどの人?」 一番近くの女の子に話し掛ける。あの人、と指を指して教えてくれた。 指の先を辿って、私は絶句した。騎士君は、友ちゃんから聞いた話より、格好良かった。 私が固まってる間に、その女の子は気を利かせて騎士君を呼んでくれた。 騎士君が目の前に来た。私は、緊張して話せない。 「やあ、えーと…、確か中宮さんだよね。三組の」 爽やかに話しかけてくれた。飛鳥が私の話をしてくれてたのかな? そう考えたら、嬉しくて少しだけ緊張がほぐれた。 「そうだよ、竜崎君。それでね、聞きたいことがあるの」 「いいよ、何でも聞いて」 騎士君は格好良いだけでなく優しいみたい。これなら面食いの友ちゃんが大絶賛するのも頷ける。 「飛鳥の事だけど…」 飛鳥という単語がでた瞬間、騎士君の顔が一瞬険しくなった。 もしかして、聞いちゃいけないことだったのかな…。 「アイツ、それで今日は部屋から出て来なかったのか…」 全て納得したって表情で、騎士君は呟いた。 あれ?友ちゃんから聞いてた話とちょっと違うな。騎士君はいつでも爽やかって言ってたけど…。 「ここじゃちょっと話しづらいから、場所を変えようか」 言われて、気付いた。ここは教室の扉の前。通行の邪魔だし、何より聞かれたら凄く恥ずかしい。 私は赤くなりながら頷き、騎士君と屋上に移動する事にした。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

460人が本棚に入れています
本棚に追加