プロローグ アナザー

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夢を、見た。 生まれて初めて本気で殴り合い、罵り合い、僕に出来なかった事を軽々やってのけた、親友の夢を。 ピピピピピピピピピ! 「んうっ………。もう朝か」 伸びをし、目覚ましを止める。時刻は六時半、いつもの時間。 今日は寝覚めが良い。いい夢を見たようだ。 立ち上がり、身支度をする。今日は始業式、遅刻はしたくない。 一階に降り、キッチンに入る。 両親は共働きで、今は家に居ないから僕が料理をしている。料理と言える程の物は作れないけど。 トースターをセットし、適当におかずを作る。 準備完了だ。後は………。 放っておくとスキップしそうになる足を押さえながら、二階に戻った。 到着。僕の部屋の隣、恋のへやと丸っこい文字で書かれた扉の前に立つ。 一日で一番の至福の時が始まる。 先ずは軽く深呼吸。よし。 扉をノックする。傷を付けるといけないので撫でるように軽く。音が出ていたかも怪しい。反応なし。 次は、呼び掛けてみる。近所迷惑になるといけないので「恋ー、朝だよー」と超小声で呼んだ。声が出ていたかも怪しい。反応なし。 恋は寝坊助さんだなぁ! これは仕方ない、恋を遅刻させないためだ、と自分を納得させ、突入する事にした。いざ、パラダイスへ! 扉をそーっと開け、抜き足で侵入する。 部屋の中はいつも通り、ピンク色の内装で、父さんが買い与えた沢山の動物のぬいぐるみ、父さんが買い与えた豪華な勉強机、父さんが買い与えた天蓋付きのベッドがある。ベッドのカーテンの中から可愛らしい寝息が聞こえるから、まだ恋は寝ているのだろう。 子煩悩過ぎる父親だな、将来ああはなりたくない。 まず、恋の臭いがする空気を肺いっぱいに吸い込む。よし、これで今日も正常に肺が機能してくれる。 名残惜しいが、窓を開け換気する。 さあ、メインディッシュの時間だ。手をわきわきと動かし、ベッドのカーテンに手をかける。 可愛い恋の寝顔を拝…恋を起こすために仕方なく開こうとして、視界の端に変なものが映った。 まだ、持ってたのか。 僕が見たものは、机の上に置いてある写真立て………の中の親友。チッ。 捨ててやろうか、という考えが頭をよぎったが、以前もやって本気で怒られた事がある。同じ事があったら今度こそ自殺するかもしれない。 写真立ては倒すだけに留めておく。命拾いしたな!恋に感謝しろ! 気を取り直し、カーテンオープン。 そこには、天使が居た。
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