序章:ノットロマンティック

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「まーわれ回れー!」 ソフトボールでもしているのか、グラウンドからはやけに賑やかな声と、たまに金属バットの快音が聞こえてくる。 ソフトボール。 俺は授業くらいでしかしたことがないから、詳しいことは知らない。 だけど、これだけは分かる。 集団球技。 チームプレーであり、他人(ひと)との関わり合いがあるということ。 そして他人と比べられ、選別され、弱き者はその居場所さえ奪われる、残酷な世界であるということ。 それはソフトボールのような集団でやるスポーツに限ったことじゃない。 “頑張っていればいつかきっと、努力が報われるときがくる”。 あまりにも無責任な言葉。 それもある程度までは真実だろう。 だけどどう足掻いても、この世界には越えられない“壁”というものが確かに存在している。 俺は、中学時代の苦い記憶を思い出した。
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