序章:ノットロマンティック

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(……俺、腐ってんなぁ) 色に例えるならば、俺は今、どんな色をしているのだろう。 多分、緑色がどす黒く変色したような、なにかが腐ったみたいな、気持ちの悪い色をしているんじゃないだろうか。 あの青空に浮かぶ、白い雲。 あんな白い色には、俺はきっと、もう戻れないのだろう。 「よっしゃ! いっけー!」 グラウンドから、またもや賑やかな声がここまで届いてきた。 (でっけー声だな) 先ほど聞こえてきたものよりも一際大きな快音に、それに喜びを見せる女の声。 たかが体育の授業に、なにをそんなに喜ぶことがあるというのだろうか。 体育の授業なんて、特にどうでもいいものじゃないか? そんな無意味に体を動かすくらいなら、こうして空を眺めてる方がよっぽどいい。 青空に浮かぶ、白くてキレイな雲。 そしてその中から落ちてくる、一つの白い球。
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