一章

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先程、銀叉に噛み付かれた喉元は血がじんわりと滲んでいる。 「……」 私は懐から『快癒』と書かれた札を取り出し、銀十郎の傷に貼り付けた。 「な、何をする……っ」 「……静かに」 するとたちまち傷は塞がり、噛まれた後さえなくなった。 「!お前は……」 「……言っておくけど」 「?」 「私が主従関係を結んでいるのは銀狼一族の頭領ではなく、銀叉というただの銀狼よ」 「……なに」 「それも千年前……つまり、前世の私と十年だけという期限つきの契約だったの」 「!ふざけるなっ、現に親父は今もお前に仕えているではないかっ」 「……銀十郎」 銀叉は重い口を開く。
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