一章

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時は平安。 それはもう、千年も遥か昔の事。 未熟者だった私は傷を負い、とにかく疲弊していた。 ……己の黒き翼で羽ばたく事が出来ぬほどに。 鞍馬山烏天狗衆頭領が長子。 それが、私だ。 次期頭領となる者は、百年人形(ヒトガタ)をとる事が許されず、烏の姿で人間界に下り修行をする。 五羽に一羽はその辛い修行に耐えられず、命を落とすという。 ……私もその一羽、というわけだ。 「死ぬのか……烏」 「……」 「死ぬのか……烏よ」 ……ぼやけた視界に映るのは、まだ年若い人間の女。 何故、このような山奥に……
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