一章

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私と竜美は幼い頃から修行を供にしてきた、いわば幼馴染みだ。 竜美はかの有名な安部晴明擁する、安倍家の分家筋でもある。 「けど……鞍馬の天狗がざわついているなんて珍しい事もあるのね」 「そうだな、気を付けろよ」 「……うん」 私は足早に家に戻った。 一歩、家を取り囲む結界の中に入ると白銀の美しい体毛を持つ狼が私の前に姿を現す。 「……で、竜美の話しは何だったんだ」 「ここの所、烏天狗達が鞍馬山から出て何かを探しているらしいのよ」 「ほう……あの血の気の多い烏達がか」 この狼の名は銀叉(ギンサ)。 代々うちに仕える妖だ。 東北の地を治める、銀狼一族の頭領でもある。
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