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濃い灰色の空から雨がこぼれ落ちてくる。
雨に濡れて黒く光るアスファルト。
立ち込める雨の匂い。
私が主人であるヒラクさんの役に立てるのはこの匂いがしている時だ。
その日もヒラクさんが学校から自宅に帰ろうとすると突然、雨が降り始めた。
ヒラクさんは私を広げ駅までの道を急ぐ。
校門を出て小さな商店街を抜けた所に最寄りの駅がある。
駅の構内に入るとヒラクさんは私をたたんだ。
私の体を何度か振り水分を落とし丁寧に束ねる。
私の柄を気に入ってくれているのかヒラクさんは私をとても大切に扱ってくれている。
そんなヒラクさんを雨から守り共に歩く学校からの帰り道が私はとても好きだった。
六月は私が一番好きな季節。
梅雨時期のこの頃、私は大忙しとなる。
しかしそんな六月に私とヒラクさんの別れは唐突にやってきた──
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