S-2

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さっき風呂場の外で碧君を待ってた時、ほんとに余裕が無かった。 少しでも顔を見たい。触れ合っていたい。 なんでこんなに彼に夢中なのか自分でも驚く。 まだたった15分だというのに。 もう彼の傍に居たい。 「あぁ、もうっ!」 駄目だ。落ち着かない。 一つ一つの歩幅も大きく、風呂場へと向かった。 「碧君、いつまで入ってるのー?」 いつまでも何も。普通に考えたらまだ全然長くもないのに。 分かってるけど。 早く出て来てほしくて。 はぁ、と盛大にため息一つ。 俺って我が儘だったんだなって。 「ごめんね、碧君…」 ぶつぶつと、口の中で小さく呟き、もと来た道を戻ろうとしたら。 『緋くーん』 碧君の声が聞こえた。 「な、」 喉の奥で声が引っ掛かった。 「なにー?」 自分でもうるさいな、と思う程の大きな声で返事をした。 だって碧君が俺の名前を呼んでる。 急いでまた風呂場へと向かって。 途中で躓き転びそうになった。 このスリッパ滑るよ! 『緋くんも入って来いよ!』 えぇっ? い、いいの! 「分かった!碧君、待ってて!」 考えるより前に言葉が勝手に飛び出す。 そして言い終わらないうちから、俺は服を脱ぎ始めていた。
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