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絶対おかしい。 俺は。 なんで、長年一緒にやってきた歳上のあの人に。 しかも、もうすぐ大台に手の届くいい歳した男に。 こんなにドキドキするんだ。 ヤバイ。 ほんっとに、ヤバイ。 「あのさ、菫くん」 ほら。 こんな舌っ足らずな呼び方。 しかも今だに少し遠慮がちなものの言い方。 「な、なに?」 動揺してる。 真っ直ぐ目が見れない程。 「今度のゲストは誰だろうね?」 俺達の冠番組の話。 毎回、何故か二人で小さなネタみたいな事をする。 なんか漫才みたいだよな、なんて言いながら微笑む顔を見て、赤面しないように必死に平常心を保ってた。 「リーダー、ちょっとこれ見てよ!」 「んぁ」 翠羽ちゃんがリーダーを手で呼ぶ。 雑誌持ってるから、記事かなんかが面白かったんだろう。 空気のような返事をしてリーダーがそっちへ向かう。 ホッとしたような。 取られて悔しいような。 俺、いつからこんな風に思ってたんだろう。 緋さんなら、聞いてくれるかな。 テーブルでパソコンを開いている後ろ姿を眺めた。
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