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「緋くん」
不意に名前を呼ばれて、ドキっとする。
今、まさに貴方の事を考えていた。
「なに?碧君」
チラッと視線を動かす。
一瞬のあいだに見た碧君は、前を向いて少し下を見つめていて。
その横顔が憂いを含んで、とても綺麗に見えた。
「好きなんだよ」
…
何が?
「あの…」
誰が、か?
「好きなんだ」
もう一度、今度はじっと眺め碧君の表情を窺う。
突然の告白。
それも主語が無い。
聞き返すのも、返し方が見つけにくい。
「…何が?」
とりあえず妥当な台詞を口にした。
ら。
「緋くんが」
驚きと。
元からあった彼への恋心が急激に重さを増して。
俺の息も思考も、全て完全に止まってしまった。
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