S

3/6
624人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
「緋くん」 不意に名前を呼ばれて、ドキっとする。 今、まさに貴方の事を考えていた。 「なに?碧君」 チラッと視線を動かす。 一瞬のあいだに見た碧君は、前を向いて少し下を見つめていて。 その横顔が憂いを含んで、とても綺麗に見えた。 「好きなんだよ」 … 何が? 「あの…」 誰が、か? 「好きなんだ」 もう一度、今度はじっと眺め碧君の表情を窺う。 突然の告白。 それも主語が無い。 聞き返すのも、返し方が見つけにくい。 「…何が?」 とりあえず妥当な台詞を口にした。 ら。 「緋くんが」 驚きと。 元からあった彼への恋心が急激に重さを増して。 俺の息も思考も、全て完全に止まってしまった。
/324ページ

最初のコメントを投稿しよう!