L.R.1st

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L.R.1st

6月17日、午後1時、土曜日。 「これ…、お袋から先生に…。」 俺はお袋から預かった紙袋を、ナナちゃん先生に手渡した。 「わざわざ有り難う、真実君。  お母さんに宜しく言っておいてね。」 俺は、ナナちゃん先生の家に来ていた。 「それで…、何の用なのかな?  また事件の話を聞きたいの?」 先生は笑顔でそう言った。 「まずは…、先生に謝りたい。」 昨日、俺がした事を先生に説明した。 「あらら…、とんでもない事を…、  クビになったらどうしようか…?」 「本当にすみませんでした。」 「謝って済む問題じゃないけど…、  まあ…、何とかなるでしょ。」 本当に楽観的な先生だ…。 怒られた方が気が楽だったかも知れない。 「それで?捜査の方は進んでる?」 「…1つだけ、聞いていいか?」 …ずっと気になっていた事だ。 これが先生を疑っていた原因の根本。 「何故、先生は俺を止めなかった?  教え子が警察の真似事をしていたら、  止めさせるのが普通だろう?」 先生は薄く目を閉じ、微笑んだ。 「あなたなら、この事件を解決出来る。  先生は最初からそう思ってたよ。」 「最初からって…、いつから?」 「あなたが東雲さんの遺体の側に居て、  その現場であなたを見た時かな?」 …それは本当に最初から、だな。 「…何でそう思ったんだ?」 「私も一応教師だからね。  その人の目を見たら、  何となく性格とかが分かるの。  厳密には性格とは少し違うけど…、  あなたは私の友達にとても似てる。  だから、そう思ったんだよ。」 「俺みたいな奴が友達に居るのか?  その人、何ていう名前なんだ?」 先生は満面の笑みを浮かべて、俺の肩に手を置き、言った。 「事件を解決したら教えてあげる。」 …意味深な言い方をする。 俺の知ってる人物なのだろうか…。 「…それじゃあ、これで失礼する。」 俺は立ち上がり、先生の家を出た。 「…真実君!!」 先生に呼び止められ、振り返った。 「もしも、あなたの出した答えが、 “私”だったとしたら…、  私はそれを受け入れるから。  あなたが考えて導き出した答えなら、  私はあなたの答えを尊重する。  だから…、最後まで頑張ってね。」 …有り難う、ナナちゃん先生。
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