L.R.3rd

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L.R.3rd

「それで…、何を根拠に俺が犯人だと?」 「俺が遺体を発見した時、  あんたは東雲の名前を叫んだ。  うつ伏せで倒れていた女生徒を、  あの一瞬で判別など出来ない。」 「君が出来ないだけだろう?  俺にそれが出来たからと言って、  何の証拠にもならない。」 嘲笑うかの様に立原は言う。 「どうして名前が分かったんだ?  倒れている生徒の名前が。」 「上靴に書いてあっただろう?」 そう、それで俺も姓が分かったのだ。 「だが顔は見えなかった。  どの角度からも、顔は見えない。」 「うつ伏せで倒れていたら、  顔は見えなくて普通だろう?  さっきから何が言いたいんだ?」 「あんたは倒れている東雲が、 “東雲夏帆”だと知っていた。  何故分かったんだ?」 「そ…、それは…。」 あれだけの啖呵を切っておいて、あっさり狼狽か…。 愛衣やナナちゃん先生達は、話が見えていないようだった。 「例えば…、九条先生。 “塚原が事故で怪我をした。”  …と聞いたら、どうする?」 引き合いに出されて当惑したのか、希望は目を点にしている。 「…片桐先生に容態を聞く、かな?」 「確かにそれが普通だな。  だが怪我をしたのは両親の方。  希望の事だとは言ってないぞ?」 「…私を馬鹿にしてるのかな?」 「…つまり俺が言いたいのは、  そういう状況になれば、  まず普通は身近な人間を連想する。  という事だ…、分かるか?」 これは愛衣が言っていた事だ。 俺は立原を問い詰める。 「あの時、あんたは言ったな?  東雲の担任は久住先生だ、と。」 「あ…、そういえば…。」 ナナちゃん先生も思い出した様だ。 「さっきも言ったとおり、  普通はまず身近な人間を連想する。  あんたにとっての身近な東雲は、  自分が担任を務めている、 “東雲七海”の筈ではないのか?」 立原の顔が徐々に引き釣っていく。 「それは…、つまりその…、  あの時は気が動転していて…。」 「気が動転していたならば尚の事、  あの場は自分と答えるのが普通だ。」 「そんなの証拠にはならない!!  何故俺が東雲を殺さなきゃならない?  動機がないじゃないか!!」 立原は最早動揺を隠す事なく、声を荒げた。 動機を求め始めたら、それは半ば犯行を認めた様なものだ。 「動機は知らんが接点はあるだろう?  あんたは東雲の担任を聞かれて、  即答してみせたのだから。」
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