L.R.4th

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L.R.4th

「どうしてそう思うんだ?」 希望が俺に尋ねてきた。 「話の腰を折る様だが、その前に…。  立原がどうやって東雲を殺したか。」 恐らく先に説明すべきだろう。 これは動機に関連する話だからだ。 立原が未だに潔白を訴えているが…。 「凶器は家庭科室の包丁。  これを選んだ理由は単純だ。  誰にでも入手し易い事から…、」 「真実君に容疑を擦り付けるのに…、  って…、そういう事だよね?」 ナナちゃん先生が確認してきたので、俺は相槌を打っておく。 「問題はその後、犯行方法だ。  背中を包丁で刺す…、というのは、  口で言うよりも簡単ではない。  相当な腕力がいるが…、  いや、そこは問題ではないな…。  1番の問題は返り血だ。  背中とはいえ心臓を突けば、  それなりの返り血を浴びる筈だ。」 「でも立原先生は返り血なんて…、」 「返り血を浴びずに背中を刺す方法。  まあ、多少は浴びる事になるが…、」 「えっ…!?…ちょっと真実!?」 俺は愛衣の腕を引き寄せ、そのまま両腕で強く抱き締めた。 「真実君…、大胆だね…。」 ナナちゃん先生に茶化されたが、取り敢えず流しておく事にする。 「何を言って呼び出したかは知らないが、  立原はこのように東雲を抱き締め、  忍ばせていた包丁で東雲を刺した。」 包丁を突き立てる素振りで、愛衣の背中を軽く叩いた。 俺は愛衣を解放し、話を続ける。 「この方法なら返り血は最小限で済み、  被害者に逃げられる事も無く、  感付かれる事も無く犯行に及べる。」 希望以外は皆、唖然としている。 「成程なぁ、確かに凄く効率的だ。  でもそれって、もし傍から見たら、  イチャついてる様にしか見えないな。」 「………。」 …周囲が凍り付くような沈黙。 そして…、それが恐らく動機に繋がる。 「希望、この方法には問題がある。  …何だか分かるか?」 「問題…?さぁ、何かあるか?」 あぁ…、やはり希望は希望だな。 「もし見知らぬ男がいきなり、  自分に抱き付いてきたら…、  女生徒はどうすると思う?」 「そりゃ…、抵抗するんじゃないか?  いや、知ってる奴でもだ…。  まぁ、恋人とかならともか…、く?」 つまりはそういう事だ。 噂で流れていた東雲の彼氏は、生徒ではなく…、教師だったのだ。
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