連続補足事件

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昭和〇〇年十二月三十一日生まれ。山羊座でAB型。ここ最近の運勢は下降気味。動物占いで言うとコアラにあたる。 生まれは京都府の舞鶴市という所。京都府の中でも日本海に面した端っこで、なかなか片腹痛い田舎である。 高校には行かなかった。試験も受けなかった。高校に行かないと決心したときは何か立派な理由があったような気もするが、今では忘れてしまった。たぶんどうでもいいような理由だったのだろう。 卒業して一番最初に就職したのは学校に協力してもらって探したペンキ屋だったが、そこは根性の無さを発揮して四日で辞めてみた。 その後、小学校時代からの友人である「スギ(仮名)」の紹介で中華レストランに就職し、そこでまず「意外と都会は家出に向かない」と痛感させられる出来事に遭遇するのである。 事の始まりは「ケーゾー(仮名)」が中型バイクの免許を取りに行くと言い出したことにある。 ケーゾーというのは僕がその店で働きだしてから少し後にアルバイトで入ってきた同い年の男で当時まだ高校生であったが後に高校を中退し、僕の家出道にも大きく関わってくることになる。しかしその時の僕はそんなことを想像もしていない。とにかくその男が事の発端をつくったのである。 ケーゾーの話によると地元の教習所ではダメだと言う。もっと都会の大きな教習所のほうが教習車の台数も多いし、システムも充実しているらしい。だから京都市内にある有名な教習所の「一週間コース」というのを予約した。と、ケーゾーは何故か大威張りでそう言うのだ。 東京や大阪に比べればなんてことはないのだが、田舎者の僕達から見れば京都市内は大都会である。同じ京都府内でありながら市内へ遊びに行くときは「京都に行く」と言ってしまうほど我々の地元とは別世界なのだ。ケーゾーもなんだかんだ言って市内で遊びたいのは見え見えであったが、ついつい羨ましそうな顔で話を聞いてしまった。 しかしここから京都市内までというと車でも一時間半はかかるほどの距離である。これはもう通うには半端な距離ではないし、まさかこいつに一週間もホテルなんかに泊まる金があるとも思えない。で、宿はどうするのかと聞いてみると、「野宿する」と平然な顔で言ってのけた。なかなかワイルドな友人である。
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