2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
阿古のコルダ1
朝の登校途中、月森は足を止めた。
公園の広場に人だかりが出来ていた。
それは異様な熱気があった。
ストリートライブだろうか。
突如始まったバイオリン演奏に頭を殴り付けられるほどの衝撃を受けた。
「な、なんだこれは……」
聞いたこともないような曲だった。
凄まじいテクニックとスピードに目を見張る。
移弦の速度、重奏法、疾走感どころか暴走しているようなその演奏。
聴衆は掛け声をかけるがその内容は「バーカバーカ! バーカバーカ!」だ。
それなのに弾き終わると割れんばかりの拍手と喚声が沸き起こった。
目眩さえした。
「なんなんだこれは……」
聴衆のなかから小さな女の子が走り出た。
月森はまたしても衝撃を受けた。
手にしたバイオリンケースとカバン、そしてあの制服は月森が通う私立星奏学園の、音楽科ではなく、普通科のものだ。
「遅刻する~!」
走り去る背中に聴衆は声を立てる。
「頑張れJK!」
「遅刻するなよ!」
「またライブしてくれよ!」
「まさにチルノのパーフェクトさんすう教室だな!」
「……はっ!?」
いけない。このままでは自分が遅刻してしまう。
月森は学校へと向かった。
私立星奏学園には普通科と音楽科がある。
創始者が作った金色の妖精の像が中央の鐘の広場に存在し、今年は開催される学園コンクールがもうすぐ始まる。
最初のコメントを投稿しよう!