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それは二月の某日。
校内の有名バカップルに認定された俺こと高里 涼介と藍原 命が、いつものごとく冷やかされながら登校し、廊下の踊り場の掲示板付近へ来たときに始まった。
「? 涼介くん、あれ……なんでしょうか?」
「あれ?」
命が小首をかしげながら指差したのは、その掲示板。
そこには、人だかりができていた。
「なんかのイベントか?」
「イベント……ですか? でもそうなら、別紙でわたしたち生徒に配布されますよね?」
「あぁそうか」
抜き打ちで行われるビックイベントなんて、化学教師の『抜き打ち☆80点取れないとお仕置きだゾ(ウホッ♪てすと』くらいだ。
確かにそれ以外のイベントにおいては、必ず事前連絡が回ってくるもんな。
ちなみに化学教師は、賀痴 無恥雄という通り名で全校の男子生徒から恐れられている。口癖は『ウホッ』。
「ちょっと見てみるか」
「そうですね」
気になる。このまま見ないでおいたら夜も眠れないくらいに気になる。
だから見たかったのだが……。
「……見えん」
人だかりが多すぎて全然見えん。
「わ、わたしなんて、掲示板すら見えません」
「仕方がない。命ちっちゃいもん」
「ひどい……」
命はところどころちっちゃいもんな。
……あれ、なんかいじけてる。
「悪かった悪かった。今度奈々さんのDVD買ってあげるから」
「ほんとですか!?」
やっぱ食いつきいいな。
命って、こういうときに奈々さんをダシにすると絶対許してくれるからな。ある意味ありがたい単純さだ。
……全国の奈々さんファンのみなさん、ゴメンナサイ。
「おー、涼介に藍原じゃないか!」
ん?
「おまえ誰だっけ?」
「はっはっは、冗談がキツいぞ涼介!」
チッ、見抜かれてたか……。
話しかけてきたのは入江 修二。相変わらずなんかアツいなー。
「人だかりが気になったのか?」
「ああ、まあ」
「教えてやるよ、聞いて驚け」
三流盗賊よろしく自信満々な表情でそう言う修二。
こういうときの情報って、果てしなくどうでもいいときが多いよな。
そう思って、若干気だるく思いながら修二の言葉を待っていた。
───だが。
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