片想いPARADOX

2/26
前へ
/31ページ
次へ
それは二月の某日。 校内の有名バカップルに認定された俺こと高里 涼介と藍原 命が、いつものごとく冷やかされながら登校し、廊下の踊り場の掲示板付近へ来たときに始まった。 「? 涼介くん、あれ……なんでしょうか?」 「あれ?」 命が小首をかしげながら指差したのは、その掲示板。 そこには、人だかりができていた。 「なんかのイベントか?」 「イベント……ですか? でもそうなら、別紙でわたしたち生徒に配布されますよね?」 「あぁそうか」 抜き打ちで行われるビックイベントなんて、化学教師の『抜き打ち☆80点取れないとお仕置きだゾ(ウホッ♪てすと』くらいだ。 確かにそれ以外のイベントにおいては、必ず事前連絡が回ってくるもんな。 ちなみに化学教師は、賀痴 無恥雄という通り名で全校の男子生徒から恐れられている。口癖は『ウホッ』。 「ちょっと見てみるか」 「そうですね」 気になる。このまま見ないでおいたら夜も眠れないくらいに気になる。 だから見たかったのだが……。 「……見えん」 人だかりが多すぎて全然見えん。 「わ、わたしなんて、掲示板すら見えません」 「仕方がない。命ちっちゃいもん」 「ひどい……」 命はところどころちっちゃいもんな。 ……あれ、なんかいじけてる。 「悪かった悪かった。今度奈々さんのDVD買ってあげるから」 「ほんとですか!?」 やっぱ食いつきいいな。 命って、こういうときに奈々さんをダシにすると絶対許してくれるからな。ある意味ありがたい単純さだ。 ……全国の奈々さんファンのみなさん、ゴメンナサイ。 「おー、涼介に藍原じゃないか!」 ん? 「おまえ誰だっけ?」 「はっはっは、冗談がキツいぞ涼介!」 チッ、見抜かれてたか……。 話しかけてきたのは入江 修二。相変わらずなんかアツいなー。 「人だかりが気になったのか?」 「ああ、まあ」 「教えてやるよ、聞いて驚け」 三流盗賊よろしく自信満々な表情でそう言う修二。 こういうときの情報って、果てしなくどうでもいいときが多いよな。 そう思って、若干気だるく思いながら修二の言葉を待っていた。 ───だが。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加