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「ふぅ」
「り、涼介くん……は、速いですよぉ……」
「おお、わりぃ。あそこから抜け出すことしか頭になくてさ」
これも自分の身を守るためなんだ。巻き込んですまない、命。
「何をそんなに息切らしてんの? あんたたち」
「おおう、これはこれは美希ではないか」
たどり着いた先は、2―B教室。
全速力で逃げたから、きっと女の会長ではついてこれまい。
ま、少しだけの猶予ってやつだ。
ところで。自らの席に命を座らせておいて、俺はかがんで息を整えていたとき。
前崎 美希が、怪訝な顔でやって来た。
事情を説明したところ。
「はー、あの超人会長からよく逃げてこられたわねー」
美希は、なんて見事な他人事だった。
「まあ、じきに見つかるだろうけどよ」
「そういえば、結局あの人だかりはなんだったのですかね?」
「「さあ?」」
命の素朴な疑問を、二人して蹴っ飛ばした瞬間だ。
「…………何もそんなすぐに答えなくてもいいじゃないですかぁ……」
命はいじけてしまった。
その表情(´・ω・` )がなんとも可愛い。
『あーあーテステス……え、もう入ってる?』
「ん?」
「放送?」
命の表情に和んでいたら、いきなりビリビリするような音と、さっき聞いたばかりの声が聞こえてきた。
「この声、会長さんでしょうか?」
すでに立ち直っていた命が、そう俺に訊いてくる。俺は、うなずいてそれに応えた。
『えーこほん。2―Bの高里 涼介と藍原 命ぉ、至急生徒会室へ参られよ。繰り返す、2―Bの高里 涼介と藍原 命ぉ、至急生徒会室へ参られよ。なお君たちに拒否権は存在しない。会長命令だ』
鋭い殺気と恐ろしき視線が注がれています(※注:二度目です
「権力の乱用ね」
「いやそんな冷静に言う前に、この注がれている視線をどうにか───さりげなく下がるな美希!?」
「とーおーやーっ」
「うっほ、どうした美希?」
「そしておまえはタイミング良く現れるなこの世に存在するな燈哉」
「いきなりひどいな!?」
とりあえず他人のフリをする美希とタイミング悪き悪友、玉置 燈哉を睨んでおいた。
「涼介くん、……こうなってしまったら、もう行くしかないようですね。……降参しましょ?」
「クッ……ちくしょうッ!」
「なんだこの茶番……」
燈哉め、余計なことを言うでない。惨めになるだろーが。
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