特別な日

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「そのつもり」 答えはわかってたけど、雅彦の言葉で安堵する。 「あ……。 空が晴れた」 あたしはふと空を見上げた。 いつの間にか雲がなくなっていた。 「ホントだ。 さっきまでどんよりしていたのにな」 雅彦も空を見上げた。 「あたし達の気持ちと一緒だね」 あたし達の曇っていた気持ちが晴れるのと同時に空が晴れるなんて……。 「確かに。 何か見透かされてるみたいだな」 心を見透かされてるか……。 確かにそうかもしれない。 「今日は見えるかな。 天の川」 織り姫と彦星。 一年に一度の大切な日。 「きっと見えるさ」 うんと頷きながら雅彦は言う。 「ふふ。 そうだね」 やっぱり雅彦は共感してくれるんだね。 「一年に一度。 大切な日。 俺達と一緒だよ」 あたしと同じ事思ってたんだ。 さすがだな。 「遠距離恋愛でも空が繋がってるように心は繋がってるよね」 織り姫と彦星は遠距離恋愛中。 あたし達と同じ。 空は何処でも繋がっている。 「そうだな。 詩織、いい事言った」 あたしの頭を雅彦は撫でた。 「臭い事は雅彦の十八番なのにね」 あたしはわざと意地悪を言う。 「叱咤激励と言ってくれ」 顔を赤くして雅彦は弁解する。 「ははっ。 そうだね」 あたしは雅彦の言葉に思わず笑った。 七夕が嫌いなんて……。 もう言わないから……。
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