特別な日

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あたしは七夕が好き。 昔は嫌いだった。 七夕が誕生日でからかわれて……。 でも今はあたしにとってとても大切な日だから、七夕が待ち遠しくてたまらないの。 あたしは遠距離恋愛中。 彼は海外留学中で中々日本には帰って来れない。 帰ってきても研究所に顔出しに行ったりと忙しいみたいで中々会えない。 そんな彼が七夕の日だけは、何が何でも日にちを開けてくれる。 寂しくて押し潰されそうになる時もあるけれど、あたしはそんな彼が……好き。 彦星と織り姫のようなあたし達の関係を周りは『よく続いてるね』なんて言うけれど、あたし達はあたし達なりに沢山の苦労を乗り越えて深い絆を作っている。 簡単には切れない絆があたし達にはある。 ……と思っていたんだけど。 彼が来ない。 待ち合わせ場所に現れない。 携帯も繋がらないし……。 参ったなぁ。 大丈夫かなぁ。 あたしの頭の中に不安と心配がぐるぐると渦巻く。 「……雨が降らなきゃいいけど」 あたしはふと空を見上げる。 何となく雨がふりそうだ。 今日は七夕。 雨がふったら彦星と織り姫は会えなくなるのかな……。 何だか悲しいな。 たった一年に一回しか会えないのに……。
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