特別な日

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「おうよ」 雅彦もにんまりして手をふった。 「わりぃな、遅くなって」 女性と別れた後、雅彦は慌ててあたしの方に駆け寄ってきた。 「……綺麗な人だね」 あたしの口からやっと言葉が出た。 雅彦を正面から見れない。 「あ、さっきのはだな……」 「言い訳は聞きたくないの! 雅彦のばか!」 雅彦が弁解する前にあたしは大声で怒鳴り付ける。 あたしの怒鳴り声で近くにいた人達が振り返る。 あたしは無我夢中で猛ダッシュする。 行く場所何て決めていない。 ただただ走りつづける。 「詩織!」 あたしを雅彦が追い掛ける。 何で……。 何で……。 七夕の日に……。 あたしの誕生日に……。 一年に一度きちんと会える日に……。 追いかけっこしなきゃいけないのよ。 涙が出る。 頬を伝い口に入る。 しょっぱい……。 今のあたしの気持ちそのものだわ。 やっぱりあたしは……。 七夕が嫌いよ……。
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