特別な日

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「あたし……。 夢見る少女じゃないもん……」 近くの河川敷であたしは足を止めた。 「詩織……。 あ、足早すぎ……」 あたしの背後からかすれた雅彦の声がした。 あたしを必死で追い掛けて来てくれたのか、雅彦は汗だくで肩を揺らしている。 「元・陸上部をナメちゃダメよ」 昔からそうだった。 運動神経抜群なあたしと運動オンチな雅彦。 成績優秀な雅彦といつも赤点ぎりぎりなあたし。 熱血あたしとクールな雅彦。 二人は何もかもが真逆だった。 お互いにないものを持っていたから余計に惹かれたのかもしれない。 「詩織、誤解してるだろ?」 雅彦があたしの顔を覗き込む。 「誤解? 何の事かしら?」 あたしはわざとプイッとそっぽを向く。 「さっきの。 詩織、顔付き変わってたし現にこうやって逃走したじゃないか」 あたしの向いた顔へ自分の顔を近づけ雅彦は無理矢理目を合わせさせた。 「あんな現場見たらそうなるわよ」 あたしは雅彦を睨みつける。 「だから、誤解だってば」 頭をポリポリかいて雅彦は複雑な顔をしている。
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