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「こんにちわ!」
竜太は挨拶をすると、弓道場に入る。
「青葉~あんた、不良の癖に生活指導委員なんてやってるんだって?笑えるわ~」
ニヤニヤとした顔で近寄ってきたのは二年の寺西亜衣だ。
「陣内先生の命令っすよ。やりたくてやってるわけじゃねっす。」
「いかにも薫先生がやりそうなことね。」
亜衣は竜太の肩にポンと手を置く。
「まー私には甘めのチェックでお願いね!」
竜太はうっすと返事をして着替えをするために更衣室に行こうとした。
しかし、道場に入ってくる人影を見て動きを止める。
「よぉ!竜太、来たぜ~」
浅野至、宮田由香里、そして三咲夏美だった。
「おまえら何で。」
「何でって、入部しに来たに決まってるでしょ?」
夏美が当然と言った顔で入ってくる。
「みんな、入部希望者!?やるじゃん、青葉!」
「えーっ!入部希望者?」
莟がすかさず走り寄ってくる。
すぐに他の部員達も集まってきて三人を歓迎した。
歓迎の輪から抜け出した夏美は道場内を懐かしそうな視線で見渡す。
「弓道はやんないんじゃなかったのか?」
隣に立った竜太は夏美に問い掛けた。
「まあね。でも、気が変わったのよ。あんたが言ったじゃない?」
夏美はそう言って微笑んだ。
「大切なものは何があっても手放すなってね。」
そうか、と呟くと竜太も道場内に視線を移す。
目に飛び込んでくるのは、やはりあの言葉だ。
竜太の心には再び『正射必中』の四文字が刻まれた。
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