一章 仲間

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「聞いてるのか?」 そんな大きい声で呼ばなくても。 それに、お前のほう向いてるが。 コイツの名前は九重威吹。(ここのえ いぶき) 忘れるわけもない。 自称俺の親友を名乗ってる馬鹿。 コイツのせいで何度問題の渦に巻き込まれたかわからない。 先生たちにすら俺がこの馬鹿の親友だと思われているし、はっきり迷惑。 …と言っているのだが、全く懲りない。 「おーい、天海雲輝(あまみ ひばき)くーん。」 「断る。」 無視するのも面倒になった。 だが、コイツが俺を呼ぶときは大抵厄介なことに首突っ込むときだ。 今までの中で一番厄介だったのはこの学園を抜け出そうとしたこと。 全寮制でこの学園から出ることを禁止されているのだが、この馬鹿は、 「久しぶりに外の世界でも見るか。」 と言って俺を誘ったのだ。 もちろん失敗に終わり、謹慎一週間の罰までくらった。 俺はそのとき逃げ切ったのだが、予想通りコイツは俺の名を出した。 俺にとって親友ではなく、疫病神と言っても過言ではない。 「何も言ってねえのに断るなよ…。」 いや、もう巻き添えは食らいたくない。 毎回俺にはメリットないし、これだけ付き合ってやったんだから感謝くらいしろよ、と思っているが口には出さない。 一応。 「まあ聞くだけなら構わないが…。」 仕方ない。 と、自分に言い聞かせた。 「よしっ。」 輝かしいほどの笑顔を携え、馬鹿は言った。 「喧嘩しようぜ。」
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