恋のスタートライン

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 教室の片隅は静かだ。あたしはその片隅の空間を自動的に手に入れてしまった。  クラスの中での孤立。今に始まったことではないので、あたしは平然と過ごしている。  本当は、めちゃくちゃさびしいのだけれど。 「乙葉ー。おーとーは」  あたしの思考を止めたのは、先ほどからうわさのツインテール姉妹である。  彼女たちはあたしの机を囲んでしゃがみこみ、あたしに会話を求めているようだった。  ツインテール姉妹とは、この学校での二つ名だ。言葉通り、髪の毛を高い位置で二つ結びにしている双子の姉妹である。  どうにも変りもので、ある意味クラスから浮いている。  父親がアメリカ人の彼女たちは、髪色が金だからである。  そんな彼女たちの髪を見て、教師は黙ってはいない。  地毛だと言っても信じてもらえないのが今の世の中。顔つきは日本人に近いからかもしれない。  そんなこの二人を、あたしは結構好きだったりする。  嘘をつく子ではないから、本当に地毛だとも思う。  なにより、あたしも少し変っているし。
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