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「…折反くん」
「はいッ!?」
いつの間にか俺のすぐ背後に居た社長が耳元で囁いてきて、俺は思わず裏返った変な声で返事をしてしまった。
「折反くんのデスク、そこだから。荷物置いたら百合野と一緒に社長室来て」
「は…はい」
社長は満足そうににっこり笑うと、隣の部屋へと消えていった。
(え…何、いきなり呼び出し?)
「あはは、そんな不安そうな顔しなくて大丈夫だよー。色々説明するだけだから」
百合野さんがそう言って緊張を和らげてくれたけど、あの社長にまた何かされるんじゃないかと思うと、別の意味で気が重い…。
「失礼します」
「どうぞ」
ノックをして社長室に入る。
実は社長室の扉を開けてくれたのは百合野さんだ。
既にあの出来事がトラウマになりかけている俺には、この扉を開ける勇気がなかったのだ。
百合野さんには、緊張して手が震えてるから開けてもらえませんか、と言った。
痴漢されたから嫌ですなんて言えるわけないからな…
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