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『これは災いの始まりだと、誰かが言っていた』
ドアの向こうには、松明とは違うきらびやかな照明に照らされた、豪華な廊下が広がっていた。廊下に足を踏み入れてドアを閉め、ふと、ドアノブにぶら下がっていた何かに指が触れた。振り返って見ると、それは紐で縛られたメモ用紙だった。
ほぼ全部の紙が引き千切られていて、最後の一枚に、あの文章が書き殴られていた。
……不吉だ。災いの始まりだなんて文章、最初のドアで見たくなかった。
青年はメモ用紙を縛り直し、ドアノブではなく横の窓枠に置いておいた。そして、ふぅっと息を吐き、ふたたび廊下と向き合う。
照明は頼りなく点滅し、廊下の豪華さを不気味さへと変える。上等な敷物の敷かれた床を、一歩一歩踏みしめて、奥へと進んだ。
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