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うーん、とソラの口は「への字」に曲がっていて、思わず、くすりと笑ってしまう。やがて、ソラは諦めたように、肩を落とした。
ソラのワンピースがゆらりと揺れて、彼女は足元に落ちていた楽譜を拾い上げ、譜面台に置いた。ピン、と、軽い音。
ここにたどり着くまでに聴いていたあの曲が流れ出す。タイトルを確認すると、【むかし、あるところに】だった。
「ソラ。君は、どうしてこのお城にいるの?このお城に住んでいるの、かな」
聴き入るように目を閉じたソラに、声をかける。彼女は薄目を開けて、小さく首を振った。
「わたしは、ここに連れて来てもらっただけ。けど、出られなくなっちゃった。だからずっとここにいるだけ」
「……ずっと、ってどれくらい?」
「んー、どれくらいかな」
わかんなくなっちゃった、と、ソラは微笑んだ。今にも泣きそうだ、と、クロは思った。
「……じゃあ……、じゃあさ、一緒にここから出ようよ、ソラ」
だからなのか。
気づけば口から、勝手に言葉が飛び出ていた。ソラが青空色の瞳を丸くさせて、「え?」と呟く。その瞳を真っ直ぐ見据え、クロは言葉を紡いだ。
「俺も手伝ったら、何か新しく手がかりが見つかるかもしれないし。二人でがんばったら、えっと……出られるよ、絶対!」
「…………、うん。うん、そうかもね」
ソラが、笑う。
初めて見た満面の笑顔に、クロの胸がじんわりと暖かくなった。
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