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ソラの口からは、メロディーのようにスラスラと言葉が流れて行く。クロはそれを逃さないよう噛み締めながら、耳を傾けた。
「世界はひとつじゃない。たくさんのセカイがあって、たくさんが重なってひとつの世界になる。わたしたちが存在する世界になる。」
ソラが、クロの手を握った。また、ぐにゃり、と歪む感覚。
「わたしは、ちょっと変な子なの。みんなと違うの」
そのまま、唐突にこぼれおちた言葉に、クロは目を見張った。
「どうして?」
「……だって、あのアーチが、わたしには綺麗に見えないもの」
「みんながどう思うかなんて、みんな違うよ」
「ちがうの……。クロ、」
青空色の瞳が閉じられた。
「今、セカイはどう見える?」
耳鳴りがした。
ハッとして、辺りを見る。
太陽の光が差し込むアトリエはどこにも見当たらない。
代わりに、足元を這うように、空中を泳ぐように、何色とも言い難い絵の具のようなものが蠢いて行く。クロとソラは、その蠢くものの上に立っていた。
「な、に?これ」
蠢くもの以外には暗闇しかない。
声が思わず震えてしまうと、ソラが手を握る力がぎゅっと強くなった。
「怖がらなくても大丈夫だよ。ここはね、【香り】のセカイなの」
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