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「さぁて、次は俺な。渋谷頼、守川と一緒の一年だが、この寮は前の学校から使わせて貰っていたから、慣れてんだ、あと俺短気だから、スベコベ抜かしたら切れるから」
鼻で笑われ、何だか馬鹿にされたみたいで少しむっと怒るが、寮に関しては勝てないと思い、渋々宜しくお願いしますと言い張り、余り目を合わせ無い様にしていた。
「あ‥もう‥僕か‥」
小さい声が不意に耳に入り、声の主を探していたら、すぐそばの右の席に座っていた。
全く気が付かなかったのだ、近くに居たのにも関わらずに。
「僕は‥、潤井‥和人‥」
立ち上がると背は高く、全く気が付かない筈は無いはずなのにと思う程、守川と潤井の背は頭二個程の差があった。
「学年は三年生だよ、僕は‥慣れるまで時間掛かると思うけど‥、宜しくね?」
全く視線をこちらへ向けずに席に着かれてしまった。
僅かに見える頬は赤く染まり、耳すらも赤く腫れ上がっていた。
「こちらこそ、お願いします」
面白いなと思いつつ、皆を見渡した。
(都会って個性派なんだなぁ‥田舎じゃこうは出来ないな)
心内で思いながら立って居ると、黒渕が再び立ち上がる。
「よし、じゃあ冷める前にご飯を食べよう、守川君の席はあそこだからな?」
黒渕が指差した場所はあの機嫌が悪そうな渋谷の隣の席だった。
新入生の守川は逆らう事を諦め、泣く泣くその席へとついた。
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