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電車を何度も乗り換え、都会に着いた、自分の住んでいた所がとてもちっぽけに思える程に。
ポケットに入れていた小さな地図を頼りにしつつ、ある場所へと向かった。
喧騒が多い場所から、もの静かな住宅街へと入って行った。
ちらほら自然も見えて来た。
人通りがあっても、静かであった。
「そこの少年」
ふと呼び止められ、足を止め、後ろを振り返った。
そこには空き地の前で小さな台の上に手相と書いた紙が乗っていた。
「え?何、おじいさん?」
田舎じゃ知らない人でも、平気で話し掛けてくるので、何も気にしなかった。
「お前さん、面白い人相しているな?」
体を向け、話しを聞くが、くにゃっと首が傾げる。
面白い人相って何だ?面白可笑しい顔をしてるって事か?
「何もへんてつもない顔だけど?」
おじいさんはくすくす笑っていた、どうやらそう言う意味ではなさそうであった。
「いやいや、そうではない‥、お前さんはここに来ていい人間だ、きっと本当の自分が見つかる‥」
しわしわになった顔が優しく俺に微笑み掛けた。
その顔を見て、俺は安心した、ここに来て間違いは無い、一人と言う事も不安が軽くなった。
「有難う、おじいさん、俺頑張るよ、またね!」
少し元気になって、また地図を確認しつつ、前へと進んだ。
おじいさんは目を閉じ、未だ来ぬ客を待っていた。
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