56人が本棚に入れています
本棚に追加
「はじめまして、守川君、ここの寮を任されてる黒渕だ、話は聞いていて、待っていたよ」
低音が綺麗に響いた、空気はまだ固く、重く苦しい感じは全く抜け無かったが、顔付きは全く変わらなかった。
でも言葉使いは思っていた程悪いものでは無かった。
「挨拶はもう終わったね?じゃあお部屋に案内するから」
この堅苦しい空気を軽い声にてブチ破り、加賀美が押し入り、直立した守川の腕を組む。
「えっ?もういいんですか?」
守川はその展開に直ぐについて行けず、どう行動していいのか動けずにただたちすくんでいた。
「ああ、頼むな、守川君、何か寮内で事件や悩みがあったら、相談してくれ」
黒渕はあっさり守川の行動の所有権を加賀美に渡し、頭を軽く下げるとゆっくり自室があると思われる二階へと上がって行かれた。
「はーい、じゃあ守川君のお部屋に案内するね」
にこやかに笑顔で黒渕の背中に手を振ると、守川の腕を外し、また荷物を持ち、階段の脇から伸びる右への通路へと歩き出す。
「は、はい‥」
切り替えの早さに圧倒されつつ、加賀美に二歩程遅れつつも、後を追い掛けた。
最初のコメントを投稿しよう!