其の二

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数日前…… 姫海棠の娘の世話を見てやってくれ―― 他でもない大天狗様にそう言われ私は今姫海棠邸へ向かっています。 印刷所に行っていきなりそう言われて泣いてなんかいません。ええ、決して。……嘘です。今回は特別面白い記事が書けたので、真剣に悲しいです。はい。 水っぽい視界の向こうに姫海棠邸が見え、私は減速を始めます。鬱憤晴らしに突撃しようかと思いましたが、ガラスが全てステンドグラスだったので止めました。損害賠償が怖かったんじゃない、単に綺麗だったからです。……本当ですよ? 「……立派ねぇ」 つーかデカすぎです。天狗の里から少し離れているとはいえど、流石に森一つ切り開いて豪邸が建っているとさしもの私でも引きます。ネタにはなりそうですが。 キョロキョロと周りを見渡し、インターホン(河童が作り出した呼び鈴、とても便利)を探したものの見当たらなかったので仕方なくとてつもなくデカい玄関を思い切りノックします。殴りつけてなんかいませんよええ決して。 「姫海棠さーん、居ますかー?大天狗様の紹介で参上しましたー、清く正しい射命丸文でーす!居るなら入りますよー!」 最近ひどくやらしい云々言われるため、清く正しいは特に強調しております。念のため言っておきますが、私は清く正しい射命丸文です。決してひどくやらしい射命丸文ではございませんのでご了承ください。……ね? ……誰に言ってるんでしょうね私。まあとにかく返事が無かったのですが、玄関は開いてるようだったので、お邪魔させていただくことにしました。不法侵入じゃありません、安否確認のため仕方なくです。ええ。
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