其の一

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「ごほ、んん、で、その娘の名前は?」 場を取り繕うために、少し大袈裟な咳をしてツインテール鴉天狗の名前を聞いてみる。 姫海棠という苗字は知っていても、下の名前は知らないし。 「ああ、紹介します。姫海棠はたて、私の後輩記者です」 「へぇ、記者か」 椛に詳しく聞いとくべきだったなぁ、と今更ながら思いつつ、ジーッと鴉天狗、はたてを見つめる。 何と言うんだろう、文に比べれば活発そうなイメージがある見た目なのに、そう、本人の雰囲気がそれを感じさせないというか、内向的な性格なのかもしれない。 「っと、自己紹介が遅れたね、私は河城にとり。見てのとおりの河童さ」 「……」 「ほらはたて、挨拶挨拶」 すごい警戒されてた。いや、自業自得とはいえすごい罪悪感なんだけど。 「で?文が単にそれだけのために私を呼んだりはしないよねぇ」 「話が早いですね、その通りです」 ピン、と文が何かを指で弾き、私はそれを受け取る。瞬間的に思考を仕事モードに切り替え、それを観察する。 「……ふーん、外の世界の記録媒体か。何を造れば良いかな?」 「この娘にカメラを、とびきり性能のいいヤツ」 「あいよ、任せときな」 クルクルと手の中でそれを弄びながら、私ははたての方を見る。そして、軽くウィンクを飛ばしてやると、何やら目を反らされた。嫌われてしまっただろうか? 「あ、あやや……すいませんにとり、いい子なんですけど」 「いや、私のせいでもあるし大丈夫」 プラプラと手を振り、私はその場を離れた。
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