プロローグ

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「顔バレするようなことはないと思ったのにな」 チッと舌打ちをするその顔は昨夜のヤツの表情そのものだった。 「そんな、他で話しませんよ。とりあえず落とし物届けられてよかったです。」 では、とその場を離れようとした。 処置室から「佐野さん」と呼び止められた。古田看護師の声だ。 「今日、外来の飲み会やるんです。一緒にどうですか?」 「いいですね、参加してもいいんですか」 「ぜひ。カンパもよろしく」 古田の横から別の看護師のちゃっかりとした返答がした。 接待費、最近厳しいんだよな。 「海野先生も行きますよね」 「いえ、僕は…」 「決まり!」 ビシッと言われてしまい、たじろんだ海野医師だが、 「わかりました」 お手上げ、と両手を挙げて答えた。
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